乾癬は、「治らない病気」といわれていますが、乾癬が発症してしまう原因も少しずつ明らかになり、その結果、治療も進化し、患者さんの選択肢は広がっています。
治療によっては、つらい症状を抑えられるかもしれません。ここでは、乾癬の基本情報について乾癬の発症する原因や主な症状、治療法について解説します。改めて乾癬のメカニズムと対処方法についてご覧ください。
乾癬とは?間違われやすい病気と治療について
●乾癬とは慢性的な皮膚疾患です。
●日本での患者数は、約43万人1)と推計されています。
●乾癬は人にうつりません。
乾癬ってどんな病気?
乾癬は慢性的な皮膚疾患です。典型的な症状は、皮膚に赤く盛り上がった紅斑が発生し、その上を銀白色の鱗屑がかさぶたのように覆います。鱗屑は次第にフケのようにポロポロと剥がれ落ち、これを落屑といいます。乾癬には幾つかの種類がありますが、患者さんの90%1)は尋常性乾癬です。
そのほか、手足の指や背中などの関節に炎症や変形が見られる乾癬性関節炎、紅斑によって赤みを帯びた皮膚に膿疱が出る膿疱性乾癬、炎症が広がり皮膚の大部分が赤くなる乾癬性紅皮症、直径1cm程度の水滴のような小型の皮疹が全身に現れる滴状乾癬があります。
乾癬でできる皮疹の大きさ、形は様々ですが、症状の進行につれて数が増え、形が変わっていき、複数の皮疹が癒合して全身に及ぶこともあります。皮疹は体中のどこにでも発症しますが、頭部や肘、膝、臀部など連続した刺激を受けやすい部位や太陽の光が当たりにくい部位で発症頻度が高いのが特徴です。
かゆみは、乾癬患者の約50%3)にみられますが、個人差があり、強く感じる人も全く感じない人もいます。爪の変形を伴うこともあり、他にも関節の痛みや腫れ、眼症状などが出ることもあり、膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症は、発熱や倦怠感が生じることがあります。
乾癬は、軽症の場合や初期のうちは脂漏性皮膚炎などの他の皮膚疾患との判別が困難な場合があります。
1), 2), 3) 日本皮膚科学会 乾癬はどういう病気ですか?
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/q01.html乾癬の原因とは
乾癬は、遺伝的要因に環境要因が加わって発症すると考えられています。遺伝での乾癬の発症率は、日本では4~5%程度です。一方、環境要因には、薬剤の使用や気候条件、個々の生活習慣やストレス状態などの外的な因子と、糖尿病や高脂血症などの内的な因子があります。
> 乾癬の原因最新の研究では、免疫システムが深く関わっていることが明らかになりました。自己免疫反応が起きやすい体質に環境因子が加わると、免疫異常を起こし乾癬の発症につながると考えられています。
乾癬の患者さんはどれくらいいるの?
乾癬は、欧米では以前から罹患率の高い疾患でした。食生活の欧米化やストレスの増加などから、近年日本でも患者数が徐々に増え、現在、日本における患者数は約43万人1)と推計されています。日本では男性の罹患率が高く、女性の2倍となっています。
乾癬の発症年齢の中央値は男性は39.5歳、女性は36.4歳とされていますが、実際年齢別の割合は、10代から70代まで年齢に関係なく幅広く分布しているのが特徴です。1)
1)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011; 38(12): 1125-1129
乾癬は人にうつるの?
乾癬は、「かんせん」という言葉の響きから人から人へ感染すると誤解されることが多い疾患です。しかし、乾癬は人にうつることはありません。たとえば、「皮疹に触れる」「お風呂やプールに入る」「美容院で洗髪をする」などの行為をしても、感染の心配は全くないのです。乾癬の患者さんは、その外見的な特徴から人目を意識した生活を送っています。本人はもちろん、周囲の人も乾癬についての正しい知識を持ち、間違った先入観を持たないことが大切です。
乾癬と間違われやすい病気
症状によっては乾癬と間違われやすい病気があるので注意が必要です。強いかゆみや皮膚のもり上がり(膨疹)、赤み(紅斑)が出る場合は、じんましんや接触皮膚炎(かぶれ)であるケースもあります。また、梅毒が原因となる「梅毒性乾癬」(乾癬ではない)やカビの一種である白癬菌が原因で爪が厚みを増す「爪白癬」、手足の指に関節の痛みや腫れ、こわばり、変形などが生じる「関節炎(リウマチ)」など、類似した症状はさまざまな病気で見られます。
1)Epidemiology of psoriasis and palmoplantar pustulosis: a nationwide study using the Japanese national claims database
https://bmjopen.bmj.com/content/5/1/e006450